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第12話 条件

last update publish date: 2026-06-23 06:00:03

「さて、値踏みの時間だ、白峰結月。君の価値ある話を聞かせてもらおう」

 失礼な物言いとわかっていながら、彼はそう言った。帝は手にしたグラスをバルコニーの欄干に置くと、私の逃げ道を塞ぐように一歩、足を進めてきた。

 大柄な彼の影が私をすっぽりと覆い隠す。 普通の令嬢なら気絶しかねない捕食者のプレッシャー。

 でも私は微動だにせず、その漆黒の双眸を見つめ返した。

「出し惜しみはいたしませんわ。諸星代表、あなたが今、裏で極秘に進めている『半導体材料事業への一斉投資』3年後、供給断絶が起こるとあなたは考えていらっしゃる。だから、材料を握る者が世界の供給網を制する――という私の予測、どこまで当たっています?」

 帝の目

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    「さて、値踏みの時間だ、白峰結月。君の価値ある話を聞かせてもらおう」 失礼な物言いとわかっていながら、彼はそう言った。帝は手にしたグラスをバルコニーの欄干に置くと、私の逃げ道を塞ぐように一歩、足を進めてきた。  大柄な彼の影が私をすっぽりと覆い隠す。 普通の令嬢なら気絶しかねない捕食者のプレッシャー。  でも私は微動だにせず、その漆黒の双眸を見つめ返した。「出し惜しみはいたしませんわ。諸星代表、あなたが今、裏で極秘に進めている『半導体材料事業への一斉投資』3年後、供給断絶が起こるとあなたは考えていらっしゃる。だから、材料を握る者が世界の供給網を制する――という私の予測、どこまで当たっています?」 帝の目が一瞬で鋭利なガラスのように尖った。「……社内のごく一部にしか開示していない国家レベルの極秘案件だ。なぜ君が、未来の供給網断絶まで見抜いている?」「簡単なことですわ。今のままこのデジタルブームが終わるとは思えません。となれば、今は飽和なものでもいずれ足りなくなる時期が来る。メモリーなどの在庫入れ替えは4年毎のサイクルで動いています。周期がずれ込めば、供給不足になるでしょう。それが3年後に起こると私は予想いたしました。もう、いい会社に目星をつけておりますの」 帝は鋭い眼光を崩さず私を見つめている。臆せず続けた。「ひとこと助言をお伝えいたしますわ

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    「光栄ですわ、諸星代表。けれど、まだ私はあなたと『契約』を結ぶとは一言も申し上げておりませんのよ?」「……なに?」 帝の完璧な美貌が、驚きにわずかに揺れた。 この男の人生において、求愛はおろか、ビジネスの提案をその場で保留にされたことなど、ただの一度もなかったはずだ。周囲の財界人たちが息を呑む音が、静まり返ったエリアに小さく響く。「確かに私は、これからの時代を動かす本物の『天才』と有意義なビジネスのお話をしたいと思っておりますわ。ですが、それがあなたであるべきか、あるいは他社であるべきか……それは私の頭脳がもたらす『未来の価値』を、あなたがどれほど高く買ってくださるか次第です」 私は帝の至近距離まで一歩足を進め、彼の高い背を見上げるようにして言った。「私をただの『気に入ったパートナー』として扱いたいなら、お引き取りください。私は誰の所有物にも、引き立て役にもなるつもりはありません。私と対等に盤面を動かす覚悟が、あなたにありますの?」 挑発的で、絶対的な自信に満ちた女王の宣戦布告。

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  • 死に戻り令嬢は、初恋を選んだ元婚約者が土下座しても絶対に許さない   第5話 極上の人生、第一歩

     その困ったような笑顔。前世で私の心をいとも簡単に溶かしたあの顔。 不思議だった。あれほど焦がれた表情を前にしているのに、私の心は凍った湖のように静かだった。 手を伸ばして彼に武藤を紹介し、二言三言の助言を与えれば、彼はすぐに息を吹き返す。そしてまた、あの幸福で——その実、破滅へと続く十年が始まるのだ。 私はゆっくりと微笑んだ。  前世の私なら、ここで罪悪感に押し潰されていただろう。困っている人を見捨てる冷たい女だと、自分を責めたはずだ。けれど私を無情に切り捨てた男のために、これ以上、自分の優しさを安売りするのは——終わりにする。「ごめんなさい。人違いだと思いますわ」「えっ……

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